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魔法使いのいない夏 [小説3]

これはむかしむかしのおはなしです。

キッドが今よりずっとなんでもありだったころのこと。

いつまでもわかくいつまでもおろかものでいられるとしんじていたキッド。

なんて若々しくそしておろかだったことでしょう。

夏の寒き森に魔法使いが住んでいてキッドもまた…そこそこの魔法を使う夢見がちな新参者でした。

今も夢が時々呼びかけます。

甘い香りの五月の花が近所の公園で咲いている時。

君がいたらよかったのにね。

君と二人で見れたらよかったのにね。

もっともっと遠くまで…君と一緒に行きたかった。

「楽園なんてどこにでもあるし」と君は言った。

「今日はテレビが面白かったし、意外な人が笑わせてくれたよ」

もっともっと遠くまで君と…神様がいるようなところまで行けたらよかった。

そして、繰り返される魔法使いのいない夏。
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